SKILL
技を追い求める
木の一本も仕上げられなくて、
俺たちは大工だと言えるのか?
鉋(かんな)から削り出される木くずを手にした時、絹のような光沢と華やかな香りに、
あなたは驚くかもしれません。
ミクロの厚さで削られた木材の表面は、
まるで水を張ったように周りの景色が映り込み、
ぬくもりの中にも、凛とした品格さえ感じさせます。
大工としてのあり方を、私たちが模索し始めたのは2010年のこと。
鉋の刃を研ぐ様子をホームページで偶然見つけたことに始まります。その姿に触発され、
自らの手で刃を研ぎ始めた時、ふと疑問が湧いたのです。
「大工って何だろう。木材の墨付けや刻み、化粧材の一本も鉋で仕上げられないのに、
この先ずっと大工だと言えるのか?」
そんな時、出会ったのが「削ろう会」でした。
そこには、1000分の1ミリを競い合いながら腕を磨く大工たちがいたのです。
「もっと無垢の木をさわったら?」
そこで受け取ったアドバイスが、手仕事に取り組む出発点になりました。
自分たちの仕事にもっと向き合い、人間的にも成長してほしいという願いが込められていたのだと、
今になって気づきます。
いい仕事は、
道具愛から生まれる
この日以来、毎年「削ろう会」で手仕事の技術を高めながら、大工道具を磨くだけでなく自分たちの手でつくることにも取り組むようになりました。
鉋台を自作し、鉋刃を仕上げ砥石で研ぎあげるのです。自分たちの道具を自らの手で生み出し、育む喜びを知りました。
最近では、木に触れる機会が少ない子どもたちに鉋削りの体験を届けるため、いろいろなイベントに参加しています。子どもたちが大人になった時、手で触れた木の温もりがほんの少しでも頭の片隅に残り、「家は自然素材の中で生活するもの」だと感覚に刻んでほしいのです。
「削ろう会」、それは私たちに大工としての心と技を思い出させてくれた、原点なのです。
削ろう会公式サイト http://kezuroukai.jp/